前回の話はここから↓
2016年3月8日 世界一周664日目
昼過ぎに例の村の一部の道が開通されたという噂があった。急いで確認したがバスが再開したという情報は得られず、今日もこの町に留まることが決まった。
食料品を買うためにスーパーに来た。開店している様子だが、スーパーの外には沢山の人が立っている。一瞬だがテレビで見る略奪シーンが頭をよぎった。しかし待っている人の表情は思っていたよりも柔らかく陽気で、こちらを気にする様子すらない。
恐る恐る待っている人たちの横を通り抜けてスーパーに入ってみた。
同じ種類のドッグフードがぎっしりと並んでいる。ガラガラと聞いていただけに、商品が並んでいることに少しホッとした。
しかし食料品の棚にはほとんど商品がなく空っぽの棚が続く。
おそらくベネズエラ国内で生産されている商品しか陳列されていないのだろう。
大きな冷蔵庫はビールの一択。
苦し紛れに少ない種類の食糧で棚が埋め尽くされている。ドッグフード類だけでも豊富にあってよかった。
日本の自給率は低く沢山の食べ物や物資を外国からの輸入に頼っていると言うが、日本がまた鎖国したらこんなことになってしまうのか。スーパーからは中国産の安価の食糧が消え、ガソリンはさらに高騰し、自給自足出来る者しか生きていけなくなるのか。
そもそも、外に並んでいる住民は一体何を買うために並んでいるのか。気になるが怖くて聞く勇気はなかった。
通りがかりにコーヒーで一息している人の新聞を撮らせてもらった。
Googleで翻訳すると『トゥメレモの住民は抗議し、町への入り口を閉鎖します』と言う意味。宿の人に後で聞くと、警察が打ち合いになった現場に行かず放置している為、住民が怒っているそうだ。
先進国だと怪我人が出ただけでヘリコプターが飛ぶし、そんな大事件が起きたら特殊部隊がすぐに事態の集結にとりかかるのに、この国ではそんなライフラインすらもないと言うことか・・・。
個人商店に入ってみた。ノートが一冊100ボリバル。公式レートで16ドル、日本円で1700円。闇レートで換算すると11セント、日本円で15円にもならない。闇レートとのギャップで頭がおかしくなりそう。
こちらはどうみてもアイスの棒の束。何に使われるのか謎。
川沿いを歩くと、バイオハザードに出てきそうなボロボロの車をよく見かけた。
日本で見ることのないレトロな車たち。きっと日本のマニアがみたら大興奮する車もあるんだろうな。
川べりを歩くと南国らしく陽気に手を振ってくれました。
この辺りはきれいに整備された公園があり、住民の憩いの場になっているようだ。
ミゾヨコ一行は一息して一旦宿に帰ることにした。
こちらは今泊まっている宿。ドイツ人がオーナーのドンカルロス。
建てられて2世紀近い建物を改装して宿にしている。
部屋もお洒落でシャワーの出もよかった。
この辺りを歩いていてわかったことは、ほとんどの家で大型犬を飼っていること。このホテルにも奥に大きな犬がいた。治安の悪い地域で家を守るためには、番犬が必要なのかもしれない。スーパーに大量のドッグフードが売ってあるのも、需要が多いから国内で生産されているのか。
バスの再開についてオーナーに聞いてみても、状況が好転した様子はない。こうなると、ロライマの後に予定していた他の予定を前に入れるしかない。当初は前半でロライマ山に登り、後半で海側に行ってゆっくりする予定だったのだが、ロライマ山を後回しにすることにした。
候補としてはベネズエラのマルゲリータ島、カリブ海に浮かぶ小さな国キュラソーあたりとなった。
他にコロンビアの離島も候補に上がり選択肢は増えたものの、フライトを選択しきれないでいた。その国の物価やアクセスのし易さなど、情報がなかなか集まらないのだ。
個人的にはオランダ領のキュラソー島に興味があった。ここから50ドル位で飛行機があるし、カラフルな家々が海沿いに立ち並び写真の撮り甲斐がある。しかし国をまたぐとなると、ベネズエラに再入国するときに飛行機でベネズエラを出国するチケットが必要になってくる。陸路移動で南米を回ろうと思っているので都合が悪い。
そんなことをネットで調べているうちに、今日もまた日が暮れてしまった。ずっとホテルに引きこもっていたので夕食ぐらいは外で食べよう。そう思ってまた外に出たのだが、ホテルの近くのレストランでさえ、夜は閉まっていた。
結局昨晩と同じく宿のレストランで食べることになった。
宿のご飯はスープとメインとパンで構成された(おそらく)ベネズエラの家庭料理。
昨日はビーフ、今日のメインはチキンでどちらも美味しかった。南国らしく、バナナもデザートではなくおかずとして出てきた。
しかし外貨を持った観光客しか泊まらない宿なので当然外国人価格となり、一食3000ボリバル。公式レートで計算すると、ひとり500ドル。日本円で6万近い夕食となる。シャンパンでも開けたのですか?ってレベルだ。
それが闇レートに換算すると4ドルほどになる。日本円で500円弱くらい。宿でご飯が食べれるのだからこんなものかと思うけど、二人分の夜行バスと一緒の値段だと思うと割高感は否めない。地元の人が一体どのくらいの予算で生活しているのか気になるところだ。
2016年3月9日 世界一周665日目
朝から宿のオーナーのマーティンに確認してみたけど、バスが開通したというニュースはまだない。Hさんが南米に来てからもう1週間になる。やったことといえばバス移動と野宿くらいで、全く予定が進まない。とりあえずまた空港に行ってみることにして、その前にカフェで腹ごしらえをする。
一緒に頼んだのはパパイヤジュースか。あまりよく覚えていないけど、南国に行くとフルーツジュースは安価で重要なビタミンの補給源となる。
空港のカウンターでチケットがどのくらいで買えるのか聞いてみた。
すると、マルゲリータ島までのフライトはたったの7000ボリバルであるという。闇両替のレートだとなんと8ドルで行けることになる。
ん?バスじゃないよね?まさかボート?飛行機で8ドルって何?もしかして貨物扱い?荷物は別料金だったりするの?サーチャージは?安すぎて本当にちゃんと飛ぶのか怖くなった。
しかし、これまでの公式と闇レートのギャップを考えると十分あり得る。
結局物価の安さからベネズエラ国内にあるマルゲリータ島に行くことにした。一行はこの後また本土に戻ってロライマを目指す。こんな時にわざわざベネズエラ国外の物価の高いリゾート地を目指す意味もないだろう。あくまでロライマ山がこの旅のハイライトになる為、マルゲリータは3泊することにした。
色々迷っている間に「安いチケットが売切れてしまったよ」とカウンターのお姉さんが残念そうに教えてくれたのだが、それでも次に安いチケットはひとり17ドル。日本円で2000円程でフライトの予約をとることができた。
そう考えると昨日のタクシードライバーが700キロを20ドルって言ってたのも、なまじ嘘ではなかったのかもしれない。
とりあえず行きのチケットを押さえて、足りないお金を両替するために街へ帰る。靴屋さんの声かけに1ドル980ボリバルで応じたものの、20分待たされた挙句に「ママに950にしろと言われた・・・・」と男が帰ってきた。めんどくさいのでそれで応じるとなんと今度は930に下がった。
どんどん値引きされるにつれ私の中のカーリー(インドの神様)が地面を蹴り始めた。一度ならず二度も値下げされると流石に腹が立つ。キレて他の両替を探しに行こうとしたところで、冷静なHさんになだめられる。彼女は一刻も早く空港に戻り残りのチケット代を支払ってしまいたいのだ。こう言う時、怒りのポイントが違うとお互いに助け合える。怒りは冷めないミゾヨコであったが、Hさんの言うことは至極真っ当。ふてくされながらも両替に応じた。
急いで空港に帰り、無事にチケットを購入した。
2016年3月10日 世界一周666日目
朝からタクシーで移動する。宿でタクシーを頼んだので外国人料金だが、おかげで予定よりも早く着いた。ゆっくりチェックインを済ませる。
コーヒーを飲みながら、これまでの旅を振り返る。
今まで移動ばかり。旅をしている感覚は十分にあるのだが、楽しむと言うには程遠いことばかりだった。本当はロライマで体力を使い切ってから海辺でゆっくりしたかったのだけど、このまま道の開通を待っていては何もできずにベネズエラを去る可能性も十分にあり得る。とりあえず安全そうなリゾート地に移動し、少しゆっくりしよう。
離陸してしばらくすると下には真っ青な海が広がり、小さな島々が見えてきた。遠浅の砂浜が見えたり、青色の海が濃くなったり薄くなったりするのを眺めているうちに気持ちが明るくなっていった。
マルゲリータ島につくと、ムッとする南国の湿気にテンションはさらにMAXとなった。ミゾヨコ一行は日本からはるか彼方のカリブ海の島にいる。テレビでしか見たことのない、あのカリブ海にいるのだ。
椰子の木とブランコ、美味しい料理とお酒とレゲエミュージックがミゾヨコ一行を待っているーーー!!!
高揚感を保持したままタクシーに乗り込み、目星を付けていたホテルに向けて走った。
空港がある僻地から東に向かうと徐々に住宅街が増えてきて、市街地に入った。海沿いまで突き進むと、海べりのリゾート地によく似合う白色の建物にバーやお土産屋がならぶ。その横に私たちが目をつけていたホテルはあった。
ところが、フロントで確認すると予約が一杯だと断られた。そして2軒目も同様だった。
え?まさかのオンシーズンで、泊まるところがないってあり得る?ここに来るまでも大変だったのに、カリブ海で珍道中AGAIN!?
多幸感にあふれるフライトから一転してがっくりする気持ちもさらに大きくなった。だがそんなことでウジウジしている暇はなかった。今晩の寝床を探すことを諦めてはならない。気持ちを切り替えて他の宿を探して歩き出した。そして大荷物を持って必死にさまようこと1時間、困り果てた一行が耳にした事実はこうだった。
実はマルゲリータ島は今の時期水不足で、水が使える時間が限られていること。それに伴って計画停電をしているため、ホテルの収容人数も少なくなっているのだ。
がーん。マルゲリータ島に来たら救われると思っていたのに、今度はホテルにさえ満足に泊まれないのか。もう自分たちの不運さに笑いが出る。
こんなところで野宿するくらいなら例え水がで出なくても、安心できる部屋とベッドはキープしたい。とりあえずホテルらしきところを手当たり次第にあたり、なんとか無理やり宿泊できるところは確保できた。
推定3星以上のそのホテルには海水のプールがあるが、シャワーが出ない。7階にある私たちの部屋も水が出ないが部屋が借りられるだけまし。
一息つき、とりあえず食事をするために繁華街を歩くことにした。Hさんと合流してはや10日目。ここに来てやっと観光らしきことができる。
本当にできる・・・・のか?
ミゾヨコがインドのカーリー神の名前をもらった話はこちら