前回の話はこちら↓
さよならカリフォルニア
2016年2月27日 世界一周654日目
ハリウッドを後にしたミゾヨコは数年前からアメリカで働いている友達Uちゃんのおうちにお世話になっていた。Uちゃんは両親が仕事の関係でアメリカにいる時に生まれたそうで、アメリカの永住権を持ってる貴重な独身男性だ。幼少期から大学を卒業してしばらくは日本にいたが、今はアメリカで仕事をしている。
彼の家は大きな倉庫の二階で広くて快適だった。日本人が多いトーランス地区だけに日本食も美味しいし、食中毒で傷ついた私の胃腸も少しずつ癒されてきた。
ある日は、西海岸のビーチにそって建てられている超高級住宅地を横目にランニングした。太平洋とラグジュリアスな家々の中を走ると、まるで自分がここの住人になった様な気がしてさらにハイでポジティブになれた。こんな素晴らしい環境でいつか暮らしてみたい。横には程よく永集権をもった独身男性もいたのだが、お互いに異性として興味を引く対象ではないようで、全く何もなく次の大陸を目指すこととなる。
2016年3月1日 世界一周657日目
Uちゃんの友達にロスの空港まで送ってもらい、重い荷物をカートにおろしてチェックインカウンターに行く。今度のLCCは色々制約が厳しく、ボーディングチケットまで自分でプリントアウトしないと数千円の手数料がかかり結局高くつく。英語の注意書きを何度も読み込み、万全にしてチェックインに挑んだ。
しかし、ここでもうまくいかない。係員はコロンビアから第3国へ行くチケットが必要だと言い出した。南米はほとんどを陸路で考えていたのでその旨をなんとか伝えるが、相手は早口でまくし立ててくる。
「カード持ってるか?」
(なんでカードがいるかよくわからないけど)「イエス」
すると、おもむろに私がプリントしてきたボーディングチケットを目の前で破くではないですか・・・・。
「ええええ!なんで破くの!」
ミゾヨコは半泣きだった。そのプリントしたチケットは私が歩いてネットカフェを探し歩き、総工費5ドルくらいはしたチケット。これを手に入れるのに半日は費やした。それをいとも簡単に破くとはどんな仕打ちか?本当にひどいアメリカ人だ。
ところが彼は、私のチケットをキャンセルして往復便で予約し直してくれたのだ。コロンビアに入国したら、その後帰国便をキャンセルすればお金が返金されるタイプのチケットにしてくれた。意思の疎通はうまくできず目の前でチケットを破棄されてびっくりしたけど、彼はいい人だったっぽい。
そしてロスからフロリダ、フロリダからパナマに移動し、パナマからコロンビアの首都ボコタについたのは翌朝だった。
コロンビア入国
2016年3月2日 世界一周658日目
初めて南米に降り立ったミゾヨコは恐怖のあまり空港から一歩も出ずに日本からくるHさんの到着を待っていた。Hさんは中南米を1年かけて旅したことがあり、スペイン語も少し喋れる。南米の旅を始めるにあたり、彼女が日本から来てくれて心強い。
コロンビアといえばコカの葉から作られる薬物が有名で治安も悪い印象。大きな荷物を抱えてひとりで市バスに乗ったらどうなるかわからない。そもそも、自分の身に危険が迫ったらなんて言って助けを呼ぶのか?この頃コロンビアの隣の国エクアドルで、ハネムーンの日本人カップルがホテルからタクシーで外出したところを強盗に襲われて死亡した事件があったばかりだったので尚更警戒していた。
半日待つことなく、無事にHさんと合流できた。旧市街へ行くには一度バスを乗り換えなければいけなかったが、Hさんのおかげで無事に辿り着けた。バスから見えた市街地は至る所に落書きこそあったが、北斗の拳に出てくる様な街を想像していただけに、いい意味で期待を裏切られた。
コロンビアの首都ボコタはアンデス山脈の盆地で、標高2640メートルに位置する。バスを降りると石畳の広場があり、そこから丘を登っていく様に伸びた道沿いに宿が何件かあった。
「ティエネス(do you have)カマ(bed)?」
これだとスペイン語で「ベッドありますか」となる。「ティエネス」はその後の「カマ」を変えると「アビタシオン=部屋」になったり「ドウッチャアグアカリエンテ=ホットシャワー」になったりして非常に汎用性のある単語だけにすぐ覚えた。
宿は想像していたよりも少し高く、値切ってひとり21000ペソ(日本円で1200円くらい)で決めた。夕方まで旧市街を歩き周り、ご当地ジャンクフードを食べた。コーンの上に牛・豚・鳥肉が乗っていて美味しい・・・・のだが3くちほど食べただけで口の中がドロドロで脂っこすぎた。
ホテルの詳細は↓
今後の予定を考える
2016年3月3日 世界一周659日目
今回Hさんがわざわざ南米に帰って来たのは、ベネズエラの秘境と言われるロライマ山に登るためだ。しかしその当時ベネズエラは政治が不安定であちこちで暴動がおきたり、警官が外国人から現金を巻き上げるという噂があった。
一行はベネズエラへ向かうバスがあるのかどうかを調べるためにバスターミナルへ向かった。バスはボコタからベネズエラとの国境の町ククタまで有ることがわかった。そこから国境へは歩いていくとの話を聞いて少し安心したが、ベネズエラ国内の情報が少なすぎて不安はまだ残る。
ロライマはベネズエラの中でも東に位置し、コロンビアからだと大陸を横断する形になる。その距離実に2500キロ。結構ハードな旅位であることには間違いない。
事前の情報ではバスを乗り継いで向かうことは可能。しかし前述の政治不安から、コロンビアからの物資輸入を阻止するために国境が閉じられていたことが何度かあり、せっかくバスで行っても無駄骨になる可能性もある。
それに、治安の問題もある。かつては石油で南米一の富裕国だったが、今では世界で有数の貧困国だと言われている。ここでの殺人はスラムだけの話ではなく、普通の暮らしをしていても遭遇する惨事なのだ。アジア人女性二人組など、カモがネギ背負っている以外の何者でもない。できるだけ危険な場所を避けて慎重に移動しなければならない。バスルートはできるだけ首都であるカラカスを通らないで済むルート、乗り換えが少ないルートを探すが、つたない英語とスペイン語ではなかなか探し出せない。そもそも、観光を収入源にしていないベネズエラが外国人にわかりやすくバスの情報を出しているわけがない。情報が少ないままベネズエラに行くことに大きな不安はあるが、冒険っていうのはこんなものなのかもしれないと思い始めた。
数は少なくても、陸路で国境を超えた人やベネズエラ国内を周遊しているバクパッカーの情報もある。それを参考にしながら今の二人にできることをすることにした。
まずは悪徳警官に外貨を取られないように隠すこと。ハイパーインフレのベネズエラでは外貨の所持は認めていないとイチャモンを付けられて没収されるそうだ。水着のパッドの間、くつ下の中、思いつくかぎりの場所にお金を分散させた。なんだか自分たちが危ないものの運び屋になったようでドキドキする。
それと、もうひとつ。ハイーパーインフレとなったベネズエラペソだが、公式の換金レートと闇では1000倍近くの誤差がある。そして面白いことに、闇レートの正式相場を調べることができるアプリまであるのだ。そのアプリはベネズエラ国外からしかダウンロードできないため、今のうちにやっておく。
2016年3月4日 世界一周660日目
まだまだわからないことも多いが、Hさんの帰国の日も決まっているのでベネズエラに向けて出発する。あとは出たとこ勝負で行くスタイル。
バスターミナルで食糧とお水を買い込みいざククタへ。国境近くの山岳地帯はコカの産地であり、時々山賊にバスが狙われると聞いた。だからこの辺りを通るバスは先に山賊に通行料を払っていると聞いたことがある。私たちも(値段は忘れたのだけど)安全をとって少し高めのバス会社にした。広いシートにトイレ付き。標高2500mの山道を物凄いスピードで走り抜け600kmの道のりを移動する。
国境の町ククタ
2016年3月5日 世界一周661日目
ククタに到着。バスターミナルから国境の町まではタクシーを使って移動した。
意外にあっさりとコロンビアの出国スタンプを押してもらえた。
と思っていたが、スタンプを見返すと日にちが間違えている。国境でのこういったミスはのちに重大なトラブルを引き起こしかねないので、慌てて戻る。係員は「んなわけねーやん」くらいの意気込みだったが、スタンプ本体を見返すと慌てて直していた。日にちが変わって8時間位は過ぎていると言うのに、係員も旅行者もどれだけいい加減なんだ。
長い橋を徒歩でわたる。どうやら以前は物資を乗せた車の往来もあったらしいが今は人しか行き来できないようにしているらしい。
そしてHさんとの最恐ベネズエラ珍道中が始まるのである。