カラパタール(標高5500m)でエベレストを見ながら消えてしまいたくなった話
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  ミゾヨコ

この日記は2014年に書かれたものですが修正して2019年に更新しています。

   まる

2014年の為替は1ネパールルピー=1円です。

Day13【Tengboche(3860m)】

2014年11月13日  世界一周432日目

朝から軽い頭痛で目が覚めた。高山病の症状が出てきたようだ。

今まで順調に標高を上げてきたミゾヨコ一行。昨日から富士山とほぼ同じ標高まで上がってきたことで、酸素が大分薄くなった。

身体をこの低酸素に慣らすために、今日は大事をとって高所順応の日にして1日ゆっくりすることにした。

昨日この宿の裏から登った散歩コースには、どうやらまた更に上に登る道があるようだ。そのことを朝食が同じテーブルだった男の子に聞いたので行ってみることにした。

さすが標高4000m近いだけあって、すこし歩いただけでも息切れがする。

ずっと遠くに小さな村が見える。車と言う文明の利器とは一切縁がない地帯に入ってはや二週間になろうとする。

物流のほとんどが人か動物に頼るこの地域で、暮らすってどんな気分なんだろう。

少しずつ普及するインターネットから流れてくる都会の様子は、ここの人達にどう映るのか。

そんな、考えても答えが出ないことをぐるぐる考えているうちに頂上に到着した。

下山してからは、苦労してこんな僻地に運んだであろうラバッツァのコーヒーで一息。

明日に備えて早めに寝る。

Day14【Tengboche(3860m)⇨Dingboche(4410m)】

2014年11月14日  世界一周433日目

今日は朝8時に出発。今日は標高を一気に600mあげるのでゆっくり進む。

1時間ほどでひらけた場所があり、沢山のトレッカーが休憩していた。

再出発。いつの間にか黒い犬がお供として加わった。

ネパールの犬は行動範囲が広く、長い時は2キロくらいは一緒に歩くことがある。可愛くて仕方がない。

途中でなにやら有名人ぽいオーラを出しながらハイキングしている人に遭遇。聞くとマレーシアの人で、来年(2015年)にエベレストの頂上を目指すそうで、その練習で今回は来たそうです。

今気になって彼の消息を調べてみると、エベレストの頂上は達成していませんでしたが、51歳でヒマラヤ街道にある7つのピークを制覇して有名になっていました。

ヒマラヤ山脈の7つのピークとはゴーキョ(5,557m Gokyo Ri)、ナガジュン(5,100m Nagarjun Peak)、チュクン(5,550m Chukung Ri)、コンマパス(5,500mKongma La Pass)、カラパタール(5,550m Khalapattar)それに加えてエベレストベースキャンプ(5,364m)およびチョーラパス(5,420m)だそうです。

あれ、書いてみて気が付いたけど、そのうち3つはこれから行くところではないですか。果たしでミゾヨコ一行はクリアできるのでしょうか。

彼の功績で、特筆すべきは他にもありました。クアラルンプールタワーをぶっ続けで登ったり降りたりして、24時間で21回往復と言う記録を持っているそうです。

凄いんだろうけど、なんだか羨ましくはない記録。と言うか、膝に爆弾を抱えたミゾヨコには自殺行為以外の何でもない。

単峰の階段ばかりの山でさえ嫌悪感があるのに、階段しかないタワーを上下するなんて絶対に無理。なんなら降りる時だけはパラシュートにしたい。

でも、一見して無意味に思えるものの向こう側には、きっと何か意味のあるものがあるはず。万が一再開した暁には色々とその「向こう側」の事を聞いてみたいと思います。

しばらく進むと、今度はヤクが荷物を移送中。

ほんと、ご苦労様です・・・・。

こんな僻地にも、田んぼを発見。

段々畑を越えると、更に雪山が近く見えるようになってきた。

標高が上がるにつれて、また頭が痛くなってきた。

何度も休みを取りながら前に進む。

今度はヤクと一緒に歩く。

森林限界を超えつつあり、草木が低いものばかりになってきた。

本日のお宿にもうすぐ到着。

到着して一服。

今となっては、カロリーなんて気にせずこってりケーキが食べれるのが羨ましいかぎり。

疲れて横になりたいところだけど、ここでまたひと踏ん張り。今日も高山病対策で宿の裏山に登って身体を慣らす。

Day15【Dingboche(4410m)】

2014年11月15日  世界一周434日目

今日も高所順応日。

Tengbocheでは頭痛があったため急遽高所順応の日をとったけど、ここでは予定通りの休みの日。

ここでK氏が山小屋のwi-fiが遅すぎると苦情を言い出し、山小屋を変えることに。

その途中に、トレッキング初日に会った日本人の女の子まりちゃんに遭遇した。

彼女も裏山のピークまで行くと言うので、新しい山小屋に荷物を置いて三人で登った。

標高5000m近くなると流石に酸素がかなり薄くなり、きつい。

少しずつ登っては休み、登っては休みを繰り返して3時間ほどかけて登っていく。

途中の道はかなりの絶景。

ここでは中国の黄山のように大声で叫ぶ人もいない分、さらにしんとして神々しい。

頂上に近づくにつれてゴロゴロ大きな石が増えてきて足場が悪くなる。

そして頂上へ到着。

まりちゃんは大学生で大学を休学してネパールにきていた。ホームステーをしていたそうでネパール語も話せる。

一人でエベレスト街道を歩きにきたそうです。

山小屋の人の話だと、ここは標高5100m。

んー。私のSUNTOの時計だといつも数百メートルほど低く表示される。今回も4900mとなっていたけど、まあいっか。

ゆっくり下山。下に広がる段々畑とK氏のドヤ顔。

宿まで帰って一息ついた。

夜間は氷点下になる。でも窓は薄っぺらく、もちろん二重窓なんてことはない・・・。

Day16【Dingboche(4410m)⇨Lobche(4940m)】

2014年11月16日  世界一周435日目

今日は8時に出発した。

ひたすら荒野を歩く。

緩やかな登山道を進むと、その先でゴロゴロの岩の道とヤクの団体に遭遇。

こんな標高で働くヤク。

日本人のアルピニストの慰霊碑・・・・。

沢山の方達の慰霊碑が並んでいました。中には永久氷河のクレパスに落ちてしまって遺体も見つからない人もいる。

標高が上がるにつれて気温もさらに下がってきた。

ロブチェ(Lobche)の宿に到着。

標高とともに宿代も一気に跳ね上がり、宿泊が1100ルピー。ヤクと人の脚によってこんなところまで物資が運ばれるのだから無理もない。

ここで明日からの予定を考える。

以前、このコースでABC(エベレストベースキャンプ(5364m)とカラパタール(5545m))の両方行った人に聞いたのだが、エベレストの展望が良いのは断然カラパタール。二つ行く時間がないならカラパタールを勧められたのだ。

ミゾヨコ一行は体調不良や高所順応に余計な時間を取られてしまった。残りのネパールビザの日数を考えると、カラパタールからエベレストを望んで、さっさとチョラパスとレンジョラパスを制覇する予定となった。

Day17【Lobche(4940m)⇨カラパタール(5,550m Khalapattar)⇨Lobche(4940m)】

2014年11月17日  世界一周438日目

今日はこの旅のハイライトのひとつとも言える「エベレストを間近に望む」ためにカラパタールに向かう。

張り切って朝6時から朝食をとり、7時には山小屋を出発した。

太陽がまだ登っていない極寒の中のスタート。宿を出て10分ほどして早速身体が我慢の限界を超えてしまった。

一体その時の気温は何度だったのだろうか。

いつもは少し歩けば体は温もってくるのに、いつまで経っても体感温度は低いまま。ありったけの防寒装備のはずなのに、低酸素の中で身体が思うように動かないのもあるだろう。さらに悪いことに太ももの方まで冷たくなってきた。

寒さに強いはずのK氏でさえ手が冷たすぎで辛いそう。

荷物は少なく身体は楽なはずなのに、うまく息さえできない。このまま二人して凍死したらどうしよう?と、あらぬ妄想が膨らむ。

自分たちをアルマゲドンのヒーローのように尊い存在に感じ、訃報を聞いた母の顔を想像したら泣けてきた。

でもそのあと、実家に置きっ放しの人に見せれない恥ずかしい写真とか日記が誰かの目に触れることを想像したら、途端にやる気が湧いてきた。

あれを自ら葬るまでは絶対に死ねない。

若気のいたりと笑って言えるのは、自らそれを披露できる場合のみである。

遺品になってしまっては、故人をしのぶにしのばれない負の遺産になるだけだ。

飛ぶ鳥は、絶対に後を濁してはならない。

フェイスマスクで覆った頬でさえも感覚がなくなっては来ていたけど、お互いを励まし合いながらなんとか脚だけは前に運び続けた。

しばらく前に進むと、8000m級の山々の合間から朝日が覗き始めた。遠くの地面を照らし始め、やがて身体を温め始めた。身体が冷え切っていたため、ダウンジャケットを脱ぐほど温まるにはかなりの時間を要した。

ロブチェからカラパタールの頂上までの予想時間は4時間と言われていたが、中間地点のゴラクシップに来るまでに既に3時間かかってしまった。

そして8000m級の山々の中にぽつっとそびえる土色の小山が出てきた。

地図で見るかぎり、これがカラパタール。

周りがあまりにも豪華な雪山なのでキッズパークの小山ほどにショボく見えてしまうが、これでもこの後400m登ったところにある標高5500mの頂だ。

標高が5000mを上回ると、さらに酸素が薄くなり身体が動かない。

足が重い。それでも、日帰りの予定で来た分だけ荷物が少なくてよかった・・・・。

なだらかだった道は、やがて岩がゴロゴロする傾斜のついた山道となった。

2時間かけて、頂上に到着。

右上の山がエベレスト。やっと世界一高い山を肉眼で見ることができた。

直線距離で約10kmであの頂上だ。

しばし座って休憩。

ついにここまでやって来た。

とうとう世界で一番高い山の麓まで来ることができたと思うと感慨深い。

またもやベン・アフレックが無事に地球に帰還した時のような深い感動で胸が打ち震え始め、涙腺が開きつつあった。しかし、クソ寒い・・・・。

ここは太陽こそ出ているが、風が吹き荒れ凍死しそうに寒く、泣いている場合ではない。

ナムチェからはるばる担いできたビールでK氏と乾杯するつもりだったけど、あまりの強風に断念して下山開始。

しばらくして風の穏やかな場所を見つけたので改めて乾杯。

正直なところ味は憶えていないけど、間違い無く人生におけるトップ10に入るロケーションで飲むビールだった。

しかし私はなぜここに来て、日本産でもネパール産でも無くフィリピン産のサンミゲルビールを持って来てしまったのだろうか・・・・。

ここは絶対にネパール産のエベレストビールを持ってくるべきだったのに、なぜナムチェでこれを手に取ってしまったのか・・・・。

今までにも、友達の誕生日にご飯に誘っておきながら、誕生日であることを忘れて自分だけ先に酔い潰れそうになる。

退職する先輩の最後の出勤日に職場のみんなが用意したプレゼントを忘れる。

友達に仕事をズル休みさせてまで連れて行ったフルムーンパーティー。日付を間違えて参加できずに帰国する、なんていう他人を巻き込んだシャレにならない凡ミスを繰り返しているミゾヨコ。

これらは今思い返しても死んでしまいたいほど恥ずかしく、申し訳ない思い出となっている。

その度に激しく自分を戒め反省する。それでもなお、ここぞという時に必ず凡ミスする。このどうしようもないツメの甘さは、きっと何回死んでも治らないんだと思う。

・・・・・・。

はい!

よって常夏産のビールを極寒の地で飲む。

日本からのあたりめとともに。高山病が悪化しないように少しずつ飲む。

思えば去年(2013年)の年末に飛行機が連日キャンセルになり来れなかったけど、あの時のミゾヨコの体力ではここまで来れていなかったと思う。

あれからアンナプルナベースキャンプ(4100m)とランタンのスルヤクンダパス(4600m)を経てやっと5000m級の山へたどり着いた。

今回でさえ高山病のために余計な日数がかかった。

去年挑戦していたら、おそらく途中で断念していただろうな。

一行は景色を堪能しながらゆっくりと下山した。

ゴラクシップまで降りると、まりちゃんがいた。

どうやら途中で雇ったガイドがばっくれたらしい・・・・。そんなこともあるのか・・・。

でも彼女はそんなことはなかったかのように、ヒマラヤの景色をスケッチブックにおさめていた。

ロブチェの山小屋では、日本人の団体登山客がいた。どうも殆どが定年を迎えた方々で、国内外でも相当いろんな山を登っているようだった。

もちろん、ミゾヨコ一行のような貧乏トレッカーな訳など無く、みなポーターに荷物を預けてガイドとともに歩く。しかし、荷物こそ預けるものの、これまでの所要時間を聴くとミゾヨコ一行よりもはるかに早いペースで進んでいるではないか。

そして、これからパスの中でも一番標高が高いパスを超えて東を目指すそうです。

マジ尊敬。体力だけでなく、経済的にもこんな風に歳をとりたいと思うミゾヨコ一行でした。

Day18【Lobche(4940m)⇨Dzongla(4830m)】

2014年11月18日  世界一周439日目

今日は標高5000mに身体が順応し、トレイルもさほど高低差のない道で楽な移動日だった。

だだっ広い河原のようなところをただひたすら奥へ奥へ。

川の水が大きな結晶を作ってキラキラしていた。

長い河原のようなところを登っていくとエメラルドグリーンの湖が見えた。

明日はチョラパスを越える日。道は険しく、この辺りのトレイルの中でも1、2を争う難しいルートとの噂もあるので早めに寝て明日に備える。

ミゾヨコの凡ミス消えてしまいたい話はこちら↓

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